“asymmetric square” Ena Magota

この度、S.Y.P Art Space では孫田絵菜の個展「asymmetric square」を開催します。この機会にぜひご高覧下さい。

会期:20171118日(土) – 1126日(日) 13:00 – 20:00

Opening Reception: 1118日(土)18:00 – 20:00

協力:S.Y.P Art Space、橋本聡、伊藤ガルシアミキ

 

 

『窓ガラスと窓の布(孫田絵菜「asymmetric square」)』

絵画は隔たった空間を眺めることのできる窓にたとえられてきました。家、車、飛行機、潜水艦、宇宙船、さらにTV、スマフォといったガラス張りの窓の展開と並走して絵画の展開を綴ることもできるでしょう。風雨、温度、気圧、海水、真空をシャットアウトする硬質なガラス張りの窓。そこから空気や水分、埃や虫などが入ってくることはありません。ガラスの透明性は、境界の先の空間を見せることで、隔たりを隠蔽し、離れた光景(画像)を都合よく量産します。

窓ガラスを目指す絵画はフレームに四辺をピンと張った布をさらに硬質化し、そして透明化しようと試みます。しかしながら、孫田は硬質化するのではなく、寧ろピンと張られた布を解き、柔らげ、そしてどのような不透明として扱うか試みます。それは、窓のガラスではなくカーテンにたとえられるかもしれません(あるいは、レンズではなく目蓋やまつ毛に)。窓ガラスは開け広げられていますが、境界上にカーテンが吊り下がっている状態です。風が吹き、布がめくれるといったわかりやすいかたちではなく、軽く揺らす程度の風が隙間から流れています。その境界の先の具体的な光景を見せるのではなく、境界自体を現わし、そして境界を挟むふたつの空間の気配や浸透が現われています。

それは、幕が開け広げられた上演中の舞台ではなく、準備する舞台と待つ客席のふたつの空間が併存し浸透する幕間のような状態。水面を眺めるのではなく、水面に浮かぶような状態。光景を眺めるのではなく、目映い光の中で半ば目を閉じるような状態です。視覚をはじめとした感覚が意識(都合)を離れ、五感の分別のない領域、起きている(現実)でも寝ている(夢)でも、生きているでも死んでいるでもない狭間の領域としてあることでしょう。

伊藤 ガルシア ミキ